此宿の便所は第一等だ

此宿の便所は第一等だ、ヤキ(木賃宿)には勿体ない、武雄のそれに匹敵するものだ。人間に対して行乞せずに、自然に向つて行乞したい[#「自然に向つて行乞したい」に傍点]、いひかへれば、木の実草の実を食べてゐたい。[#1字下げ]四月十一日[#「四月十一日」に二重傍線][#「四月十一日」は同行中見出し] 晴后曇、行程六里、深江、久保屋(二五・上)歩いてゐる、領布[#「布」に「マヽ」の注記]振山、虹ノ松原、松浦潟の風光は私にも写せさうである、それだけ美しすぎる。松原逍遙、よかつた、道は八方さわりなし。今夜はずゐぶん飲んだ(緑平兄の供養で)、しかし寝られないので、いろ/\の事を考へる――其中庵のこと、三八九の事。[#ここから2字下げ]・朝からの騷音へ長い橋かゝる(松浦橋) 春へ窓をひらく・松風に鉄鉢をさゝげてゐる・松はおだやかな汐鳴り・へんろの眼におしよせてくだけて白波・旅のつかれの腹が鳴ります・しらなみの県界を越える    □・わびしさに法衣の袖をあはせる[#ここで字下げ終わり]酒は嗜好品である、それが必需品となつては助からない、酒が生活内容の主となつては呪はれてあれ。木の芽はほんたうに美しい、花よりも美しい、此宿の周囲は桑畑、美しい芽が出てゐる、無果花の芽も美しい。

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