お神使《つかい》の神様《かみさま》

私《わたくし》がお神使《つかい》の神様《かみさま》から真先《まっさ》きに言《い》いきかされたお言葉《ことば》は、今《いま》ではあまりよく覚《おぼ》えても居《お》りませぬが、大体《だいたい》こんなような意味《いみ》のものでございました。――『そなたはしきりに先刻《さっき》から現世《げんせ》の事《こと》を思《おも》い出《だ》して、悲嘆《ひたん》の涙《なみだ》にくれているが、何事《なにごと》がありても再《ふたた》び現世《げんせ》に戻《もど》ることだけは協《かな》わぬのじゃ。そんなことばかり考《かんが》えていると、良《よ》い境涯《ところ》へはとても進《すす》めぬぞ! これからは俺《わし》がそなたの指導役《しどうやく》、何事《なにごと》もよくききわけて、尊《とうと》い神《かみ》さまの裔孫《みすえ》としての御名《みな》を汚《けが》さぬよう、一|時《じ》も早《はや》く役《やく》にもたたぬ現世《げんせ》の執着《しゅうちゃく》から離《はな》れるよう、しっかりと修行《しゅぎょう》をして貰《もら》いますぞ! 執着《しゅうじゃく》が残《のこ》っている限《かぎ》り何事《なにごと》もだめじゃ……。』 が、その場合《ばあい》の私《わたくし》には、斯《こ》うした神様《かみさま》のお言葉《ことば》などは殆《ほと》んど耳《みみ》にも入《はい》りませんでした。私《わたくし》はいろいろの難題《なんだい》を持《も》ち出《だ》してさんざん神様《かみさま》を困《こま》らせました。お恥《はず》かしいことながら、罪滅《つみほろ》ぼしのつもりで一つ二つここで懺悔《ざんげ》いたして置《お》きます。 私《わたくし》が持《も》ちかけた難題《なんだい》の一《ひと》つは、早《はや》く良人《おっと》に逢《あ》いたいという註文《ちゅうもん》でございました。『現世《げんせ》で怨《うら》みが晴《は》らせなかったから、良人《おっと》と二人《ふたり》力《ちから》を合《あ》わせて怨霊《おんりょう》となり、せめて仇敵《かたき》を取《と》り殺《ころ》してやりたい……。』

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