閻魔様《えんまさま》らしいもの

 閻魔様《えんまさま》らしいものに逢《あ》った様子《ようす》もない……何《なに》が何《なに》やらさっぱり腑《ふ》に落《お》ちない。モー少《すこ》し光明《あかり》が射《さ》してくれると良《よ》いのだが……。』 私《わたくし》は少《すこ》し枕《まくら》から頭部《あたま》を擡《もた》げて、覚束《おぼつか》ない眼《め》つきをして、あちこち見※[#「廴+囘」、第4水準2-12-11]《みまわ》したのでございます。最初《さいしょ》は、何《なに》やら濛気《もや》でもかかっているようで、物《もの》のけじめも判《わか》りかねましたが、その中《うち》不図《ふと》何所《どこ》からともなしに、一|条《じょう》の光明《あかり》が射《さ》し込《こ》んで来《く》ると同時《どうじ》に、自分《じぶん》の置《お》かれている所《ところ》が、一《ひと》つの大《おお》きな洞穴《ほらあな》――岩屋《いわや》の内部《なか》であることに気《き》づきました。私《わたくし》は、少《すく》なからずびっくりしました。――『オヤオヤ! 私《わたくし》は不思議《ふしぎ》な所《ところ》に居《お》る……私《わたくし》は夢《ゆめ》を見《み》ているのかしら……それとも爰《ここ》は私《わたくし》の墓場《はかば》かしら……。』 私《わたくし》は全《まった》く途方《とほう》に暮《く》れ、泣《な》くにも泣《な》かれないような気持《きもち》で、ひしと枕《まくら》に噛《かじ》りつくより外《ほか》に詮術《せんすべ》もないのでした。 その時《とき》不意《ふい》に私《わたくし》の枕辺《まくらべ》近《ちか》くお姿《すがた》を現《あら》わして、いろいろと難有《ありがた》い慰《なぐさ》めのお言葉《ことば》をかけ、又《また》何《なに》くれと詳《くわ》しい説明《せつめい》をしてくだされたのは、例《れい》の私《わたくし》の指導役《しどうやく》の神様《かみさま》でした。痒《かゆ》い所《ところ》へ手《て》が届《とど》くと申《もう》しましょうか、神様《かみさま》の方《ほう》では、いつもチャーンとこちらの胸《むね》の中《なか》を見《み》すかしていて、時《とき》と場合《ばあい》にぴったり当《あ》てはまった事《こと》を説《と》ききかせてくださるのでございますから、どんなに判《わか》りの悪《わる》い者《もの》でも最後《しまい》にはおとなしく耳《みみ》を傾《かたむ》けることになって了《しま》います。

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