なんとも愛くるしい事件

「まったくない。」 ホームズは笑みをこぼし、「なんとも愛くるしい事件でございます。」「余には深刻な問題であるぞ。」と王は非難がましく言い返した。「そうでしょうとも。ところでその人物は写真を使ってどうするつもりなのですか?」「余を破滅させるのだ。」「して、どのように?」「余は近々婚姻を予定しておる。」「そのようにうかがっております。」「相手はクローティールド・ロトマン・フォン・ザクセン=マイニンゲン、スカンディナヴィア王国の第二皇女である。かの王室の家憲が厳格なことは其方も存じておろう。王女自身の性格もまた、繊細そのものであるのだ。余の品行にいささかの影あらば、事は終局へと進んでいくだろう。」「するとイレーナ・アードラーは。」「写真を先方に送りつけると脅迫をな。あの女ならやりかねん。そのことは余がよく存じておる。知らぬであろうが、鉄の心を持つ女なのだ。外見こそは美しい女性であるが、内に秘めたる心たるや、不屈の男であるぞ。余が別の女と結婚するくらいなら、いかなる手段にでも訴え出るであろう……いかなる、な。」「写真はまだ手元にあると確信しておられますね。」「いかにも。」「なにゆえですか?」「婚姻が公式発表になる日に送ると言いおったからな。発表は次の月曜に予定されておる。」

— posted by id at 07:01 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.1994 sec.

http://1yen.tv/