私はベイカー街に着いた

[#3字下げ]二[#「二」は中見出し]

 三時に遅れることなく、私はベイカー街に着いた。だがホームズは不在だった。家主の女性によると、朝八時に家を出たきりだという。私は暖炉のそばに腰掛け、ホームズの帰宅が遅くなろうとも待つことにした。すでに私は、ホームズの調査に対し並々ならぬ興味を抱いていた。これまで記録した二つの事件のように、奇々怪々たる特徴があるわけではない。事件の性質や依頼人の身分の高さに、独特のものを感じるのだ。加えて、今回の事件の性質を他にしても、そもそも、ホームズの事件の裏を読む力、鋭く切れる推理のために、私はその捜査方法を研究するのが楽しくてたまらない。快刀乱麻を断つその様を追いかけるわけだ。いつもうまく解決するのに慣れていたので、ホームズにも失敗することがあるなど、夢にも思わなかった。[#挿絵5(fig226_05.png、横374×縦710)入る] 四時頃扉が開くと、酔いどれの馬番が部屋に入ってきた。乱れた髪、ほおひげをたくわえ、赤ら顔で粗野な服といった様である。我が友人の巧みな変装術は熟知していると思っていたが、それでもホームズであると確信するには三度も見なければならなかった。うなずくと、ホームズは寝室に姿を消し、五分後いつも通りのツイードを礼儀正しく着用して現れた。両手をポケットに突っ込み、暖炉の前に足を投げ出したかと思うと、ホームズはしばらく気の済むまで笑い続けた。「いやはや!」とホームズは叫ぶと、むせかえり、再度笑い出したあげく、ついには椅子の上でぐったりし、動かなくなってしまった。「何事かね。」「極めて滑稽なことだ。僕が今朝何をしてきたか、そしていかなる結末に至ったか、君には絶対わかるまい。」「思いもつかん。イレーナ、いやイギリス風に発音しよう。つまりアイリーン・アドラー嬢の習慣とか、おそらく家でも見に行ったというところか。」

— posted by id at 07:02 pm  

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